2024-09-09
図書館やネットで良い本を見つけると手元に置いておきたくなるものである。最近は消せるボールペンもあるので、気楽に書き込めるのも紙の本の良いところだ。なんか心に残る気になる。
松永正訓著「医者が患者の前で考えていること」(三笠書房)を購入した。
ここまで本音が分かる本というものはどんな分野でもなかなか無い。日本では稀有な書籍である。
この松永先生の本にも出てくるが、クリニックから病院への紹介状とはかなり微妙なシステムである。
実は、半年前に、厄介な皮膚病になり、近くのクリニックから地域の大病院への紹介状を書いてもらったことがある。こちらから依頼したわけではなく、原因が不明で、病院でのステロイド治療が必要だと、そのクリニックの医師が判断したのである。
問題が起きたのは、その病院に予約電話をした後のことである。
新患の予約が一杯で、受診できるのは一週間後だという。その夜も全身痒く手眠れない。これを一週間続けたらおかしくなりそうだと、翌々日我慢できずに再度そのクリニックを受診した。
そこでの医師の言葉にちょっと驚いた。無理やりその大病院に押しかけても良かったのにーという趣旨の話である。それでは、風邪で救急車を呼ぶ悪徳患者と同じようなものではないかーと思ったのである。
客観的に見れば、皮膚病で痒くて眠れないから救急車を呼ぶというのは救急隊員にとってはうれしいことではないだろう。
ともかく、クリニックで痒み止めを再度処方してもらい、一週間我慢して予約通りに大病院の皮膚科を受診したのである。
結果的に予後は良かった。(予後とは松永先生の本では病気の今後の予測のことらしいが、prognosisの直訳で経過診断とか、今後診断とかでは忙しい医師にとって長い単語なのだろうか。)
この紹介状問題で、なにがいけなかったのか。結局のところ、紹介状は大病院のすべての新患が持っている。しかし、個々の患者の状況、その緊急性が電話では伝わらない。なぜなら、予約を受け付ける係が、事務的に次に空いている時間と医師を機械的に割り当てるだけなのだからである。
従って、最も重要なのは、このような新患予約係に、ベテランの看護師など綜合医療の専門家とを充当し、電話で患者の状態を聞くことである。少なくとも、私の場合は、単に可能な受診日、時間を指定されただけで、病状については何の質問も受けなかった。
別の案としては、紹介状にトリアージ的な緊急度区別を記載し、病院が患者に紹介状のトリアージ区別を聞いて、優先順位をつけて時間を割り当てるという方法もある。しかし、これはなかなか実現が難しそうだ。患者が上位のトリアージであると知ったら救急車を呼ぶかもしれない。トリアージ順位が紹介状の手紙の内部に書かれていてたら、紹介状は患者は開封できないので、予約においては意味は無い。どちらにせよ今の紹介状システムは問題だらけである。
例えば、クリニックと大病院のデジタル的な連携ができれば患者には知られること無くスムーズな新患対応が可能になるのかもしれない。
この場合は封書の紹介状自体が不要になるだろう。デジタル庁が厚労省と連携してこのようなシステムを作れれば、マイナカードの普及にも役立つかもしれない。
松永先生には、次回作として、素人向けの医療用語集というものを出版してもらいたい。文科省向けの研究提案では、審査する非専門家の先生向けに用語集を添付することが推奨されている。これは、その研究提案で用いている専門用語を10行程度で解説するもので、これがあると非専門家でも全体の狙いが良く理解できるようになる。このように、医療の素人むけの全般的な受診マニュアル用語集があれば患者は安心して医療関係者とコミュニケーションできる。
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