放射線ホルミシスという仮説がある。
これは低線量被ばくであれば、免疫が活性化され、がんなどの病気にかかりにくくなるという効果である。
近年この仮説が多くの科学者からある程度支持されるようになってきた。
佐渡俊彦著「放射線と免疫・ストレス・がん」医療科学社、第5章、他
また、
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によれば、国内の家屋では、ラドンの濃度がある程度高いと肺がんリスクが低下するらしい。
これは、玉川温泉とか有馬温泉など放射能泉でのがん患者の緩解効果と相通じるところがある。
それならば、喫煙もホルミシス効果はあるのではないだろうか。
がんの主犯と言われて久しい喫煙習慣にこのような効果は本当にないのだろうか。
これは、少量の喫煙ならば発がんへの免疫効果があるという仮説である。
しかし、この話を複雑にしている要因に、紙巻きたばことリン肥料の二つがある。これらはたばこの発がん性を刻みたばこから大きく変えた可能性がある。
江戸時代以前に、我が国に喫煙の習慣を持ち込んだのはキリスト教宣教師だったらしいが、その時代は刻みたばこが普通だった。
舘かおる編「女性とたばこの文化誌」(世織書房)によれば、明治天皇の皇后(昭憲皇太后)は喫煙習慣があり当時としては長命だった。当時は刻みたばこが普通だった。しかし、1926年に紙巻きたばこ生産量が刻みたばこを上回ったそうだ。
紙巻きたばこでは紙の燃焼によるタールなどの影響があるし、キセルによる刻みたばこの少量燃焼とは燃焼温度も異なるだろう。
さらに、戦後はたばこ増産のためリン肥料が大量に使われ、リン肥料の原料である火山性のリン鉱石に含まれるポロニウム210放射能も含まれるようになった。
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によれば、現在も輸入リンの半分はリン肥料用である。
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によれば、標準的な吸い方ならば年間の被ばく影響は基準値以下になってはいるが昔の刻みたばこでリン肥料を用いなかった時代に比べれば大幅な増加であろう。リン肥料を大量に用いる米国では紙巻きたばこの中のポロニウムが発がん性の主犯であるとの報告もある。
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ところで、紙巻きたばこもリン肥料もない時代、長崎の隠れキリシタンの女性が隠れたばこを喫する結果でのたばこの害または益はどうだったのだろうか。
1945年の原爆被ばく生存者における広島の女性喫煙者と長崎の女性喫煙者では発がんに対する放射線効果が異なるようである。これが喫煙ホルミシス仮説で説明可能だろうか。
仮に長崎の原爆に被ばく時までに、長崎の女性が、男性や広島の女性よりも刻みたばこを少量喫煙している割合が多かったとすると、喫煙ホルミシス効果により発がんに対する免疫が強化され、被ばくによる発がん影響が男性や広島の女性とは異なっても不思議ではない。
戦前の少量喫煙様式なら、喫煙ホルミシス仮説も検討に値するかもしれない。
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