2024-10-15
広島の放射線影響研究所が公開している白血病関連のデータは残念ながら1950年よりも以前のデータは無い。これでは終戦後の混乱の中で、原爆被ばく数年内にピークがあると言われる急性骨髄性白血病(AML)の多くが含まれない。しかし、1950年から2001年までの間に、白血病、リンパ腫、多発性骨髄腫の罹患データが公開されており、約120000の対象者に対し、1200件ほどの症例が被ばく線量などのデータとともにリストされている。
AIの医学応用がノーベル賞で注目されているが、ここでは、手元パソコンでできる範囲で、これらの症例と被ばく線量の関係を分析してみた。
(手法は、本ブログ9月3日の固形がん解析と同様、統計ソフトにより、
ゼロ線量(5mGy以下)の被ばく者を基準として、線量範囲を上方に広げていった場合のERR(ERR/Gyとは、ExcessRelativeRisk/Gyの略であり、RelativeRisk(ゼロ線量者の発症リスクを1とした場合の超過分) を単位線量(1Gy)被ばくに換算して表示した値である。ここでは、両市、両性に対する全症例を対象に解析した。
線量範囲 線量偏回帰係数 解析精度
(mGy) ERR /Gy p値
5ー20 -6.144 5.79E-01
5−40 -7.113 3.05E-03
5−60 0.067 9.69E-01
5−80 -0.152 8.97E-01
5−100 0.588 5.44E-01
5−125 0.251 7.36E-01
5−150 -0.457 4.25E-01
5−175 -0.432 3.77E-01
5−200 0.029 9.48E-01
5−250 -0.186 5.94E-01
5−300 0.310 3.09E-01
5−500 0.346 7.61E-02
5−750 0.393 5.45E-03
5−1000 0.488 2.39E-05
5−1250 0.514 4.31E-07
5−1500 0.422 1.16E-06
5−1750 0.480 9.19E-09
5−2000 0.510 3.15E-10
5−2500 0.512 2.69E-12
5−3000 0.503 2.48E-13
3000以上 0.512 1.10E-13
このp値にみられるように信頼できる値を0.05以下とすると一般には750mGy以上でERRが0.5程度になると考えられるが、5−40mGryのp値が0.05以下であり、これを信用すれば血液がんも固形がんと同様、ERRが低線量で負になる可能性もあるということになる。
今後、AI発達とともにがん発症と放射線影響の関係もより明確になっていくであろう。そのためにも、現在日本が保有している原爆による各種がんの発症データの信頼性、精度を交渉する必要がある。その最重要なデータとして、米側が独占している広島長崎原爆線源データの詳細の公開が望まれる。現代の核兵器は1945年当時とは全く異なるメカニズムなので、機微情報ではないはずだ。
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