2024-09-20
9月15日夜に放送されたNHKスペシャル「第四の被ばく」によれば、被ばくした測量船拓洋が1956年の7月に危険地域に近づく前に、米国は日本に対し被ばく基準を定めるよう要求していました。これは、1954年のビキニで被ばくした第5福竜丸事件で日本の反核運動が盛り上がり、反米運動となって在日米軍や冷戦での米国の立場が弱くなることへの懸念が下地にあったとのことです。
しかし、これを受けて日本の厚生省の委員会で当時採用された基準はICRP(国際放射線防護委員会)が1954年に定めた放射線作業従事者に対する年間50ミリシーベルトを流用しただけのものでした。
ではなぜICRPは急性障害で問題となる瞬間被ばくでの時間線量率制限を設けなかったのでしょうか。
ChatGPTによる答えは**************行の下にしめしますが、要約すると、
「本当は白血病など急性障害に対する基準を決めたかったが、データがなく、瞬間被ばくの測定法もないので広島・長崎で測定された被ばく量からできるだけ小さめに年間被ばく量制限を決めた。これにより、瞬間被ばくでの急性障害も防護できると考えた。」
ということです。しかし、この基準は2重の意味で有害無益でした。瞬間被ばく対策として、年間被ばく線量を小さめに決めたのです。現在の基準では多少小さく、年間20ミリシーベルト(従事者、また、事故後の特定状態)或いは年間1ミリシーベルト(一般人)となっていますが、有害無益であることは変わりません。
これは、元々が水爆などの瞬間的な被ばくのために、定量的な根拠も無く、無意味に小さくしているため、この基準を守って無理な避難を行ったため、核爆発のような瞬間被ばくの恐れがない福島事故では事故関連死につながってしまいました。
一方、急性障害についてはどうかと言えば、確かに、年間被ばく量を小さく設定するのは傾向としては良いのですが、1年は秒で表せば3153600秒です。このような長い時間により50ミリシーベルトを割ったとしても、原爆や水爆のようなミリ秒以下で割った時間線量率よりも数ケタ小さくなります。(1ミリシーベルトを年間秒数で割った場合は、3.2×10のマイナス7乗ミリシーベルト/秒、1ミリシーベルトを1ミリ秒で割った場合は1000ミリシーベルト/秒)
即ち、原爆や水爆の瞬間被ばくの時間線量率に対する制限にはならず、実際の被ばくよりも10桁も小さい時間線量率制限になり、無意味です。なぜなら、このような瞬間被ばくを受けた人は1ミリシーベルト/年制限は守っていることになりますが、急性障害で問題となる時間線量率は10桁も高い被ばくを受けているということになるからです。
このため、水爆の瞬間被ばくを受けた拓洋船員は当然として、水爆と同様の反応である太陽フレアのプレパルシブ相の高エネルギーX線被ばくを受ける高空で勤務するCAも同様に白血病リスクが増えます。CAはICRP基準で20ミリシーベルト/年の制限を受けてはいますが、瞬間被ばくに対する時間線量率制限は現在もICRP勧告にはありません。
恐ろしいことにこれは、CAだけでなく、運悪く太陽フレアを浴びた一般旅客も同じです。(詳しくは先週以前の本ブログを参照ください。)
現在も短時間被ばくを正確に測定するのは難しいかもしれませんが、関係官庁や放射線管理関係の関係者は、ICRPの基準さえ守っていれば、マスコミにも文句は言われませんので、瞬間被ばくは無視したままです。
しかし、今年から、太陽フレアは活動期に入っています。また、無意味な放射線事故関連死も防ぐ必要があります。早急に瞬時被ばく時間線量率制限を考慮した新基準を整備し、同時に、最近の半導体技術、AI技術を駆使した小型の放射線測定装置、太陽フレア予測システムを開発して、実効的な放射線防護法を構築することが、市民の健康と経済を守るために重要だと思います。
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