ICRPが瞬時線量率を被ばく基準に含めなかった理由
2022-09-25


ICRPの放射線防護基準は、我が国の放射線関連法規が準拠している基準である。広島・長崎の被ばく者発がんデータはこのICRP基準の主要な根拠となっている。(松本義久編「人体のメカニズムから学ぶ放射線生物学」メジカルレビュー社、P.178他(2017))
 
 一方、原爆のガンマ線照射時間は、広島の放影研の報告書等にもみられるようにマイクロ秒〜ミリ秒の間である。
 しかし、ICRP基準では厳密に瞬時照射による線量率制限、即ち、シーベルト/ミリ秒というような基準は存在しない。
 ICRP基準では線量制限は、シーベルト/年、又はシーベルト/3か月といった長期の被ばくの平均値に対して示されている。

上記のテキストでも、厳密な瞬時照射の定義はなく、急性照射という記述により、高線量率照射(単位時間当たりの線量が高い場合)と低線量率(単位時間当たりの線量率が低い場合)の解説はあるが、明確な時間を定義して瞬時照射の評価を示したものはない。

 例外として、1時間当たりの線量が0.1シーベルト以下ならばその線量効果を半分にしてよいというDDREF補正(上記テキストP.184)というものもあるが、これも原爆の被ばく時間よりも6桁も長い時間を対象としたものである。

 なぜ、ICPRは真の瞬時照射による高線量率制限を設けなかったのであろうか。そして、瞬時照射での時間積分線量と発がん率の関係から、年間線量制限など長時間の平均線量制限だけにしたのだろうか。

 これは、原爆被ばくのデータが限られており、瞬時線量率を正確には得られなかったという理由があるのかもしれないが、より可能性があると思われるのは、この原爆データは当時想定されていた、米ソ冷戦下での核戦争による瞬時被ばくの問題や、宇宙利用や高高度航空機利用での宇宙線による瞬時被ばくの問題を持ち出すのが憚れたのではないかということである。

 近年、民間航空機の客室乗務員(CA)における発がん問題が提示されている。
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など、また、これに対し、紫外線影響などで説明しようとしている報告もみられるが、成功していない。
 これは、2025年にピークを迎えると予測されている太陽フレアによる瞬時被ばくの影響と考えられる。
 太陽フレアは太陽表面における重水素の瞬間的な異常核融合反応であり、中性子や陽子も発生するが、ガンマ線も付随的に発生する。厄介なのはガンマ線で、光速で地球に到達するため、中性子や陽子、磁気嵐などのような対策を事前に打つ事はできず、高空にいる人間は瞬時被ばくせざるを得ない。(地上の人間は水10メートル相当の大気層で保護されている。)
 この太陽フレア(年間5〜10回発生する)による瞬時被ばくは防ぎようがないのでICRPも瞬時被ばく制限を敢えて設けなかったのではないかと思える。その結果、客室乗務員(勿論頻度の多い航空旅客も)の発がんが増える、これが公になれば、宇宙・航空業界全体の発展を阻害することに繋がるーといった問題に忖度した可能性は考えられる。
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