京都女子大名誉教授の小波先生のサイト
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では3月時点での大曲貴夫・国際感染症センター長の話からPCR検査に関する感度(感染者を陽性と判定する確率で60〜70%程度らしい)、特異度(非感染者を陽性と判定する確率で1%らしい)のデータを引用して以下の可能性が高くなると記されている。
即ち、感染者が全人口に占める割合が低い場合には、非感染者が感染者と同じ比率でPCR検査を受けたとすると、
(1)非感染者の絶対数が感染者の絶対数よりも圧倒的に多いので、非感染者が陽性と判定される偽陽性患者数が増加してしまう。
(2)その結果、感染者が陽性と判定される真の陽性患者数が、(1)による偽陽性患者よりも少なくなり、先に偽陽性者のみで一杯になるため、医療施設が有効活用されないということになる。(厚労省は偽陽性者による訴訟リスクを気にしているとの情報もある。)
これに対し、テレビ朝日の羽鳥モーニングショーでは、PCR検査回数を何度も行うことで、この問題をクリアすることを提案しているようである。
では、どの程度回数を増加すればよいか。仮に感度と特異度が上記の値であるとし、感染率が0.1%(神奈川県平均報告件数0.018%の約5倍とした)とすると以下のようになる。
人口 (概算) 感染者比率 感度(偽陰性度) 特異度
9000000 0.001 0.7 (0.3) 0.01
を前提とすると、
感染者が最初の検査で正しく陽性となる確率が0.7、即ち、(1-0.3)であり、1回目、2回目とも陽性となる確率は(1-0.3^2)となる。(^は階乗を表す。全体の確率が1なので1から偽陰性となる確率を引くこととなる。)これをn 回の確率×感染者数とすることで陽性判定数が計算できる。
検査回数(n) 1 2 3 4
感染者 9000人 陽性判定数 6300人 8190人 8757人 8927人
同様に、非感染者がn回検査して、n回続けて偽陽性となる確率は0.01^nとなり、これに×非感染者数とすることで偽陽性判定数が得られる。
検査回数(n) 1 2 3 4
非感染者 8991000人 偽陽性判定数 89910人 899人 9人 0.1人
上記で
感染者の陽性判定は n回続けて陽性になった場合に真の陽性と判断すると計算したもので、非感染者の偽陽性判定は非感染者がn回続けて偽陽性となった場合に真の陽性と判断されると計算したものであり、感染者、非感染者を問わず、n回続けて陽性となった場合の件数となる。
従って、2回陽性と出れば感染者が8190/9000の確率で陽性と判断される一方、非感染者は899/899100の確率で陽性と判断されることになる。回数を増やせばその差はさらに拡大する。
即ち、仮に検査精度がかなり悪くても、疑い対象者を2回独立に検査できる検査体制を整備できれば偽陽性者は真の陽性者の1割程度まで低減できる。
言い換えれば、少なくとも2回の検査を独立に行えば、前述のような偽陽性者の増大に伴う医療資源の無駄遣い問題や偽陽性による訴訟問題も無視できる大きさになる。
従って、モーニングショーで言われていることが本当であれば、厚労省は前例にとらわれず、検査体制の拡充を行うべきである。
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