そんなに簡単に核兵器を持つことはできない
2025-03-23


ただし、これらの新型核兵器で絶滅できる範囲は直径10キロ程度である。現在の米ロの所有核兵器をすべて使っても地球の陸地面積の1%以下である。数発で他国に脅威を与えようとすれば、ロケットの制御技術が核兵器技術以上に重要になる。

 このような核兵器体系を開発するには優れた制御技術と高精度の機械的、電気的製造技術が必要だがそんなものは現在の日本には存在しない。開発するにしても十年はかかる。北朝鮮のように、白昼他国人を誘拐できるような諜報員が世界中にいる国でもそうなのだから日本ではもっと時間がかかるだろう。

 爆発時の熱膨張を抑制するレアアースにしても日本はないに等しい。ほとんどが中国からの輸入である。レアアースの管理は厳しい、核兵器に利用するレアアースを輸出してくれる国が世界のどこかにあると核武装論者は本気で思うだろうか。北朝鮮のように国家が密輸する国はできるかもしれないが。

 そんな不経済でリスクのあることをしているので北朝鮮のように経済は疲弊するのである。ソ連は米ソ冷戦による軍事費増大のために経済が破綻した。中国はソ連の技術を譲渡されただけだし、ウクライナは核兵器の維持の大変さを知っているのでロシアに引き渡したのである。米国は核兵器体制維持のために膨大な軍事費が必要になり、現在は、トランプの発言にみられるように他国の防衛まで面倒は見ないという状況になった。

 これらの主要因は核兵器の維持には非常に金がかかることにある。なぜなら、まず、プルトニウムというものは放射性物質なので崩壊していく。プルトニウムはリンゴや野菜と同じ生ものである。プルトニウムに含まれるプルトニウム241の半減期は14年である。これが最初に2%あったとしても、14年で1%に自然に減るのである。遅発中性子割合という爆発に必要な反応度(臨界性を示す指数)は0.4%である。これだけ臨界性が減ったら爆発しなくなる。従って、最近報道でたまに見かけるが臨界前核実験という爆縮を簡易的に模擬し、爆発に必要な臨界性が維持できているか定期的に実験しているのである。

 では、その核兵器が爆発できなくなるとわかったらどうするか。腐ったリンゴと同様廃棄せざるを得ない。現在、世界には1万発以上の原爆があるが、過去に製造された原爆はその10倍はある。それは爆発できない状態のまま、廃棄解体されたことになっている。(詳しくは多田将「核兵器」明幸堂参照)

 その原料ですらレアアースを含め現在の日本には自給するすべはない。日本の軽水炉では原爆用プルトニウムの生産も不可能である。

 こんな不経済な防衛システムに予算をかけてどうするのだろうか。米国ですらその負担にあえいでいる。日本は外交努力と経済力の増強で他国から侵略されにくい国になる道しかない。北朝鮮のような国になるというなら話は別だが。
 
 小国では、防衛リスクはどうやっても生じるが、核兵器を持つことによるリスクのほうが持たないリスクよりも大きいのは明らかだ。

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